情報公表制度創設の背景
なぜ、情報公表制度ができたのか
「介護サービス情報の公表」制度は、介護保険法にもとづき平成18年4月に施行されました。
介護保険施行後、介護市場に民間企業の参入が進み事業所は急増しましたが、サービス選択のための客観的な情報は提供されおらず、利用者も介護保険制度についての知識が十分ではないために、サービスを適切に選択することはできない状況にありました。
そこで、介護保険の基本理念である「利用者のサービス選択」を現場レベルで実現するために、情報公表制度が創設されました。
情報公表制度の基本的な考え方
情報公表制度は、介護保険制度の基本理念である「利用者本位」「高齢者の自立支援」「利用者による選択(自己決定)」を現実のサービス利用において保障するための仕組みです。
情報公表制度の基本的な考え方は、あくまでも介護サービスの内容を明らかにし、利用者がサービス選択を適切に行えるようにするための情報開示の徹底であり、サービスの評価ではないということが特徴です。
介護サービスの評価は、様々な価値観がある中で、サービスの質を一定のものさしで測ることは難しいため、あくまでも利用者自らが行うという考え方を基本としています。
情報公表制度の仕組み
情報公表制度の概要
情報公表制度の目的は、利用者による介護サービス事業者の選択を支援することです。したがって、介護保険法にもとづく指定事業者のうち、実際に介護サービスを提供していない事業所は対象としないことになっています。
介護サービス情報の公表制度の仕組みは、次図のとおりです。介護保険法第115条の35を根拠として、都道府県知事及び政令指定市長が策定した計画にもとづき報告、調査、公表が行われています。
介護サービス情報の公表制度の仕組み
基本情報とは
基本情報は、事業所を運営する法人の概要やサービス従事者の数、サービスの内容や料金体系、利用者の実績など、事業所のサービスを選択するうえでの事実情報で、サービスを利用するにあたり、あらかじめ利用者に対して公表するべき項目として検討されたものです。
基本情報は、それぞれの事業所がその特色等を公表できるスペースもあり、利用者に介護サービス事業所の基本理念や独創的、先進的な取り組みなどを公表することもできます。事業所が自ら基本的な事実情報を公表する仕組みとなっていることから、事実と異なる情報を提供した場合は、利用者や家族に対してその説明責任を果たさなければならないことになります。
基本情報の項目
事項 | 主な内容 |
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記入者など | 記入者名、部署・役職、記入年月日 |
運営法人の概要 | 法人名、所在地、法人種類、開設日、代表者名、ほかに提供している介護サービスなど |
事業所の概要 | 事業者名、管理者、所在地、交通手段、開設日など |
職員の体制 | 職種別職員構成、常勤・非常勤職員数、在職年数など、職員1人当たり利用者数など |
利用料金など | 介護保険利用者負担以外の料金、キャンセル料、有料老人ホーム等の一時金など |
サービス内容など | 営業時間、サービス提供地域、建物の構造、トイレ・浴室・食堂などの状況、サービス提供実績、サービス提供制限例、損害賠償保険加入状況など |
運営情報とは
運営情報は、利用者本位のサービス提供の仕組み、職員教育の状況など、介護サービス事業所のサービスの内容、運営等に関する取り組みの状況を利用者が把握するための情報で、大項目、中項目、小項目、確認事項及び確認のための材料で構成されており、その判断が抽象的、主観的なものなどあいまいなものであってはならないことから、事業者は「確認事項及び確認のための材料」の有無を報告します。
運営情報の項目
評価との違い
情報公表制度と第三者評価の大きな違いは、公表情報の一義的な受益者は、利用者であるのに対して、評価情報の一義的な受益者は事業者であるということです。また、情報公表制度は、介護保険法ですべての介護事業所に義務づけられていますが、第三者評価は、事業者の任意による仕組みとされている点が異なっています。
第三者評価については、介護サービス事業者の自主的なサービスの質などへの取り組みを支援するため、一定の評価基準にもとづいて、サービスの質などの達成度合を評価し、改善指導、経営指導などを行う手法で、その結果から個別具体的に課題を発見し、改善指導や経営指導を行うため、サービスの質の向上に直接寄与することが可能となります。